何度目になるのか・・・
もう、わからないけれど。
淋しい夜に、いつも側にいてくれた・・・
大好きな人と二人、月を眺めている。
『 月の夜に嘘をつく 』
「お前はよぉ・・・少しは警戒とかしろよな?いくら屯所の中とは言え、遅い時間に一人でうろついて、誰かに襲われたらどうすんだ?」
夜の巡察を終え、隊服に身を包んだままの原田が、へ向かって言う。
「大丈夫ですわ。平隊士が相手でしたら、私の方が強いですし・・・幹部様は、そんな事しませんでしょう?」
その隣をゆっくりとした足取りで歩くは、口元に手を当てるとクスリと笑い、原田の忠告を流してしまう。
原田が夜番で、巡察の時に限って・・・夜中に、屯所の中庭で月を眺めているに、よく出会った。
一番隊に配属され、常に沖田の傍らに存在するの剣の腕前は、原田だけでなく、局長以下平隊士まで知れ渡る、周知の事実である。
それでも夜中に一人で出歩けば・・・何があるかわからないと言う事を、心配する気持ちをわかって欲しいと思うのだが、何度原田が言い聞かせても、
は耳を貸そうとはしないのだ。
に気づかれないくらいに、軽く溜息をつき・・・
「毎晩、こんな遅くに出歩いてんのか。もしかして、俺が戻る時間に合わせて出向いてくれてる・・・・・・とか?」
そうであれば良いのに・・・と思いながら、冗談めいた口調で原田は言うと、月明かりの降り注ぐ中庭の中央付近で足を止めた。
隣を歩くは、そのまま・・・原田の数歩先で止まり、天を仰ぐ。
「いいえ。一人で部屋に居たくない夜に・・・時々、此処から月を眺めているだけですわ。原田さんにお会いすることが多いのは、偶然ですわね。」
月を見上げたままは答えるが、その表情は原田からは見えなかった。
「ですが、こうしているのは、一人で居たくない時ですから・・・原田さんが一緒に居て下さるのは嬉しい・・・と、思っておりますの。」
振り返り、微笑むは淋しげに笑う。
の、淋しさの原因を・・・原田は知っている。
"決して、自分を振り返る事は無い・・・"
と、は思い込んでいる、その想い人の事を考えているのだろう。
新選組に入隊してからずっと、そいつの事だけを、は想い続けている。
好きで・・・好き過ぎて、想いを告げる事すらできない恋をは抱えていて・・・
そして、それに気づいてしまった自分。
・・・いつも、を見ていたから。
が誰に想いを寄せているのか、すぐに気がついた。
そして、あいつがに惚れている事も・・・本当は知っている。
「でもまぁ・・・不意打ちとか、数人でとか、もしかしたらあるかもしれないだろ?
どうしても淋しい夜には・・・俺がいつでも付き合うから、一人で出歩くのは止めろよ・・・な?」
危険だから・・・と、本当にそう思っている訳ではない。
ただ、淋しいと言うを独りにさせたくないのだ。
の顔に指を伸ばし、右手でその頬に触れる。
「ありがとうございます。その、お気持ちだけで嬉しいですわ。」
原田を見上げ、は柔らかく微笑んだ。
降り注ぐ月の光の中で・・・ゆっくりとがまぶたを閉じると・・・・・・
鳥が啄ばむよりも軽く、原田は触れるだけの接吻を落とす。
出会う度に繰り返される、淋しさを紛らわせる・・・儀式のような、接吻。
そのまま、原田はの背中に両腕を回し、緩く抱き締める。
「俺はいつでもお前を応援してる。辛くなったら、いつでもこうして慰めてやるから・・・頑張れ。
・・・俺はお前を愛してるよ・・・だから、幸せになれ。」
この言葉は嘘ではないけれど・・・・・・
(でも、お前とあいつが上手く行くように・・・手助けはしてやれねぇよ。ごめんな)
グッと一瞬、抱き締める腕に力を込めると、も原田の背に腕を回してきた。
「ありがとうございます・・・原田さん。大好きですわ」
(・・・あの方の次に・・・ですけれど。)
「ああ、知ってる。」
(あいつの次に・・・だろ?)
抱き締める腕を放すと・・・二人、見つめ合った。
言葉の裏の本当の事を、きっとお互いに知っている。
けれど・・・・・・
愛の言葉を交わすかのような台詞の裏に一人の存在の影を隠したまま・・・
もう一度、口付けた。
今度は、深い恋人同士のような接吻を・・・・・・・・・
【終】
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沖田さん夢と言うより原田さん夢みたいになってしまいました・・・
しょっぱながコレって(苦笑)すみません
嘘をつくのはお互いさまと言うことで(笑)
2006.10.01 紅月レン
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