貴女が、僕以外の人間と話をし、僕以外の人間に微笑みかける。

その瞬間に込み上げる、苦い想い。

この、胸の奥を侵蝕していく感情を、何と言うのか・・・

僕は知らない。



『 独占欲むき出しの恋 』



朝から行っていた稽古で、思う存分平隊士を叩き伏せ、清々しい気持ちで部屋へと向う。
その途中、銀色の髪をした人物を視界に捕らえると沖田は気配を消し走り出した。

「原田さ〜ん。さっき、さんと何話してたんですか?」

ドス・・・と音を立てて背中に飛びつくと、原田は眉を顰め、何とも言えない表情で振り返る。

「あ〜大したことじゃねぇよ。」

少しだけ目を逸らし答える原田に、沖田は訝しげな視線を送る。

「ふ〜ん、僕に言えない事なんですかぁ?」

「ばっ!・・・んなわけねぇだろ。何で俺とでお前に言えない話なんかすんだよ。」

明らかに動揺する様子に、胸の奥がチクリと痛む。

「原田さんは・・・僕のさんを取らないでくださいね。」

飛びついたままだった原田の背中から下りると、沖田は小さな声で呟いた。

「そうだよ!お前、またアレ・・・やってたんだな」

急に大きな声を出し、沖田を振り返ると、が一人で稽古をしていた時の様子を思い出して原田は言う。




昼間に沖田がを道場から追い出した理由それは・・・

を口説きたければ、仕合で沖田から1本取る事』

と、沖田が隊士達に言った事が発端である。

普通に考えれば、平隊士が沖田から剣で1本取るなんて事は到底無理なことだが、諦めきれない隊士が、稽古中に沖田と仕合うのだ。

そして、その時だけ、沖田はがその場に居ることを許さない・・・
もちろん、に想いを寄せる隊士が居ることをに知られたくないだけなのだが。
そうとは知らないは、淋しさを抱え・・・一人で稽古をしていたのだった。



さんは僕のものなんですから、原田さんにだってあげませんよ。」

平然と言い放つその沖田の言い方に、原田は呆れ顔をする。

「お前、それを本人に言ったのか?そもそも、いつからはお前のもんになったんだよ。」

さんに?!言うわけないじゃないですか・・・そんなこと。いつからか何てわからないですけど、僕がそう決めた時から、さんは僕のものです。」

まるで子供のような独占欲。
そこに想いがある事を本当にわかっているんだろうか・・・と、原田は思わなくも無いけれど・・・


「・・・言ってやれよ。本人に。」

ぽつりと原田は小声で言う。
きっと、沖田がそう思っているだろうことをが知れば喜ぶだろうと・・・そう思って。


けれど、

「言えません。」

沖田は否定の言葉を返す。

「何でだ?」

「だって・・・嫌われてしまうじゃないですか。」


フイ・・・と横を向き、原田から視線を外すと、沖田は少しだけ眩しそうに目を細める。

「綺麗な花は見ているだけでドキドキします。花弁を散らせて・・・花を手折ってしまいたいと思うこともありますけど、やっぱり駄目ですよ。」

「花ねぇ・・・お前にとっては花か?」

「はい。僕にとってさんは、大輪の薔薇のようなひとです。原田さんは見たことが無いかもしれませんけど、とても華麗に剣を振るうんですよ。」
目を閉じ、その姿を思い出し、沖田は口元に笑みを浮べる。

「刀の一振りごとに飛び散る血が花弁のようで・・・返り血を浴びて微笑む姿は、正に紅い薔薇そのものなんです。」

こんなふうに、楽しげに女の事を話すのを聞いたのは初めてだな・・・と原田は思い、苦笑いを浮べた。

「だったら・・・もうちょっとわかりやすく、優しくしてやる事だな。には伝わってねぇぞ?」

「原田さんが、何を言いたいのかわかりませんが・・・?」


原田の物言いに、沖田は不思議そうに首を傾げる。


「あいつを・・・を、泣かせるなって言う事だ。」

「僕がさんを・・・?そんな事するはずないじゃないですか。むしろ、さんを泣かせるような輩は、僕が許しませんよ。」

(あいつが泣くのは、お前の事でだけだ。総司・・・・・・)
そう言ってやるのも悔しくて、しばらく原田は黙り込み、二人の間に沈黙が落ちる。






「あ、それから・・・」付け加えるように沖田は続けた。

「原田さんがさんを泣かしても・・・許しません。」

ニッコリと笑みを浮べるが、目の奥は笑ってはいない。
すぅ・・・と周囲の空気が冷えていく感覚がし、原田のこめかみを冷たい汗が流れ落ちていく。

「・・・俺相手に、殺気放ってんじゃねぇよ。」
何度目かになる苦笑いを浮かべる原田に

「もちろん、僕から奪っていく事も・・・許しませんけどね。」


更に沖田は言い放つ。

胸の奥に広がる独占欲の、意味に気づかないまま・・・・・・





【終】


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『切ない距離』の直後のお話。
やっと沖田さんが書けましたよ(笑)
なのに今度はヒロインが出てきませんでした(苦笑)


次・・・に行く前に、一本短い話を挟むかもしれません。



2006.10.16 紅月 レン



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