日中は肌を焼く程の熱を帯びた太陽も、その姿を大地に沈め始める刻限には、市中を流れる風が
暑さを沈める夏の終りの季節。
三条大橋に幕府が立てた高札が、投棄されるという事件が頻発した。
幕府の威信を懸け、犯人を捕縛すべく、警護の任に就いたのは新選組。
連日連夜の警護の甲斐もあり、原田左之助率いる十番隊が、犯行に及んだ土佐藩士を捕縛し、
一応の解決をみた。
犯行に及んだのは、一部の人間だとしても、土佐藩の者が幕府へ反旗を翻しているという事実は、
また別の波紋を呼ぶことになるのだけれど・・・・・・



『これが最後』



昨夜、土佐藩士捕縛により三条大橋事件は解決し、警備の任を解かれた新選組の屯所は、
久々に静かな夜を迎えていた。
その静寂の闇に紛れて、動く影がひとつ。
小さな灯りを灯す部屋へと近づいていく。

「待たせたな・・・」

こっそり忍び入る黒い影が、背後からを抱き締めた。

「左之助さん・・・」

背後から掛かる声に、は嬉しそうに微笑を浮かべ振り返る。
そこに居るのは、逢いたいと願っていた人物・・・原田左之助だった。

「まったく・・・どれくらいぶりだ?こーやって逢うの・・・なんか今が信じらんねーくらいだぜ」

はにかむように笑った気配が、の背後から伝わる。

「此処暫くはお互い隊務が忙しかったですものね・・・高札の件もやっと方がついて良かったですわ。
・・・良かったと言う結果ではありませんでしたかもしれませんけれど」
「あぁ・・・まぁ、仕方ねーことなんだけどよ。やっぱ精神的に良くねーよな。
どんな結果でも犯人がわかった事は良かった事だろ。またこうして過ごす夜もできるしな」

苦笑いを浮かべたに、やはり同じく苦笑いを浮かべた原田は、抱き寄せる腕に、ほんの少しだけ
力を込める。

「そうですわね。こうしてお逢いできるのも本当に久々ですから、今夜はゆっくり過ごしましょう?」
「わかった。ずっと・・・こうしたかったぜ・・・・・・」

の肩に腕を回し自分の方に引き寄せ、耳元に口を寄せると、普段よりも少し低くなった甘い声が、の耳を擽った。

「私も、ずっと左之助さんにこうされたいと思っておりましたわ・・・」

耳元で囁かれると、はピクリと身体を震わせる。

「・・・本当か?これ以上のことも・・・じゃねぇのか?」
「・・・これ以上・・・って」

想像し顔を真っ赤にしたを見て、原田はにやりと笑うと、耳朶を軽く咥え

「ん・・・?、顔赤いぜ?」

思わず幸せそうな笑みを零す。

「あんっ・・・。・・・ただ、側に・・・左之助さんに触れられたいと思っただけですわ」

耳を噛まれ、思わず声が漏れたは、頬を染めたまま俯いた。

「やっぱ・・・の声って可愛いよな。触れられてぇってどこに触れられてぇんだ?」
「・・・意地悪な事おっしゃらないで下さい」
「そうか?」

頬を染めたまま顔を上げるに、くくっと喉の奥で笑いながら、原田は答える。


の髪を掬い上げそのまま頭に手を回すと、引き寄せて唇を重ね、
唇を何度か甘噛みするように重ねると、舌でちろっとの唇を舐め上げる。

「んっ・・・」

唇を噛まれ肩を震わせると、も答えるようにチロリと舌先を出し、
伸ばされた舌先を絡め取るように、原田はの唇を塞いでいく。
絡み合う舌先から、クチュリと濡れた音が響き、仄明るい部屋に、小さな水音が広がっていった。



互いを堪能するように合わされた唇がゆっくりと離れ、潤んだ目で原田を見上げるを、
原田を目を細め、愛しげに見つめ返す。

「こうしてお前に触れられるのも・・・ホント久し振りだよな。だいたい最近はゆっくり話してる
暇もなかったし」
「お逢いする暇もありませんでしたものね」
「あぁ・・・だいたい隊務が忙しすぎるっつーのも問題だよな。あとは時間帯が合わなかったりよ」
「でも、私はこうして一緒に過ごせる時間を持てるだけで嬉しいですわ」
「・・・って、そんなこと位でそんなに喜んでんじゃねーよ」

嬉しそうに微笑むに、原田も同じく嬉しそうな笑みを浮かべる。

「でもよ、こんなに隊務が擦れ違うってのもおかしいよな・・・ま、まさか土方さんにバレちまった
とか・・・・・・?」
ははっと、原田は笑いをするが『そんな訳ねーよな、ハハハ』と、自分に言い聞かせるように言い募る。

「そんなっ・・・事は・・・でも、土方さんならありえなくも無いかしら?実は気づいていらして・・・
隊務の時間をずらされたりとか。でも、こっそり意地悪なんかされませんわね。
関係が露見していれば、きっと単刀直入に怒られそうですわ」

少し考え、苦笑いを浮かべるも、さらりと恐ろしい事を言う。

厳密に隊内での恋愛事が禁止されているわけではない。
けれど、二人の関係がおおっぴらに出来ない事は確かで、暗黙の了解というのが存在するも事実だ。

「いや・・・まだはっきりとはバレてなくてよ、わざとじらして露見させようとしてたりな。
ま、そん時ゃそん時だよな!怒られる時は一緒に怒られよーぜ?まさか、いきなり切腹なんて
言われねーだろうしよ」
「探りを入れている段階とか?そのうち監察方に命が下ったりするのかもしれませんわね。
でも露見してしまっても、もう手放すことはできませんもの。その時は一緒に怒られますわ。
二刻半の小言にも耐えましょうね?」

開き直って大口で笑う原田に、も小首を傾げクスクスと笑みを零す。

「そうそう。あの人ならやりそーじゃねーか?こーいうことには慎重だったりすっからよ。
なーんて、今更バレちまったところで何も変わるもんもねーしな。って・・・二刻半かよ・・・
が居るから少し大目に見てやろうとかなんねーかな・・・いや、あの人のことだ。
どーせ俺だけ時間追加とかやらされそーだぜ・・・」

ぶつぶつと零れる原田の呟きに、クスリとが笑う。

「泣く子も黙る新選組の鬼副長ですものね。左之助さんが延長されるのでしたら私も一緒に
怒られますわよ?」
「あぁ・・・まぁ土方さんはすげぇと思うぜ?思うんだけどよ・・・たまに怖ぇよな。
それによくあれだけ色んな言葉が出てくると思うぜ。あの二刻半・・・
でもまぁが隣に居てくれんならそんなに長く感じなかったりしてな」

何かを思い出し、原田はブルリと身体を震わせる。

「怒られた事ありますのね?・・・二刻半」
「ぐほっ・・・・・・ま、まぁ、男には色々と・・・な?」

がチラリと原田に視線を向けると、原田はゴホゴホと咽込んでいる。

「あら・・・殿方の事情ですのね・・・・まぁ良いですわ」
「っ・・・・・・その・・・誤解だからな?別にそーいう変な理由じゃねーぞ?」
「私は何も言っておりませんわ。でも殿方の事情は色々ありますでしょうから・・・ね?」
「ま、まぁ・・・色々あるけどよぉ・・・」

口元に薄く笑みを浮かべるに、原田は首の後ろを掻きながら困ったような表情で
原田は視線を泳がせ、

「まぁ・・・あれだ!あんなの絶対土方さんにしかできねーな。 俺にやれっつったって絶対ぇ
無理だぜ」

原田は慌てて話題を元へと戻す。
その慌てる原田の様子に、はクスリと小さく笑みを零すと、愛しくて堪らないというように目を細め、微笑んだ。

「確かに、それだけ長時間話す方もきっと大変ですから、土方さんしかできませんわね。
二人で怒られるのであれば、その間も一緒に居れますわよ?」
「確かにそん時ゃ堂々と一緒に居れるな・・・って、おい!!
そんなことになったらの痺れた足を俺がこっそりつついちまうぜ?」

「・・・痺れた足を突付かれて思わず声が出てしまったらどうしますの?
土方さんの前でそんな遊びをしたら小言の時間が延びてしまいますわ」
「勿論遊びだってバレねぇように・・・だぜ?」

「痺れた足を突付かれたら・・・バレますわよ・・・だって私も突付き返しますもの」
「突付き返すのかよ!?・・・侮れねーな。そりゃ、お小言もバッチリ延長だろうぜ」

「ええ。もちろん左之助さんを突付き返しますわよ?土方さんの隙を狙って。
意外と負けず嫌いなんですの」
「まぁそーいうとこがの可愛いとこなんだけどな。絶対負けねーぜ?そーいう時はよ」

「あら?私だって負けませんわ」
「うひゃひゃ。それじゃいつものように俺等のじゃれ合いになっちまうだろ?」

「じゃれあいになって小言の時間が延長、もしくは呆れた土方さんがお終いにして下さるかも
しれませんわよ」
「おぉ!それはいい手かもしんねーな。ま、すげぇ賭けだけどよ」

ポンと手を叩きカラカラと笑う原田と、
楽しくて仕方が無いというふうに、クスクスと笑みを零し続ける


言葉遊びのように繰り返される会話。
逢えば逢う程に、苦しさばかりが募るこの関係が、優しいものに変わっていったのはいつからだった
だろう。
笑い合う事の喜びを、に教えたのは原田だ。

その原田と一緒だから、もし、本当にこの関係が露見していたとしても、何も変わらないと笑って
言う事ができるのだ。


「でもよ、本当に土方さんにばれてても、俺はお前を手放す気なんてねーからな。
過去がどうであれ・・・だ。つまりは・・・今、お前がこうして俺と居る事が大事っつーことだ」

不意に真剣な表情を見せ、頬を掻きながら、はにかんだように微笑みを浮かべた原田に、

「・・・其の時々で考えている事は色々ありますけれど・・・
左之助さんが考えている以上に、私はきっと最初から左之助さんの事を気に掛けておりましたわ。
今も大切ですけれど・・・此処に至るまでに積み上げた全ての時間も愛しいと・・・思いますの」

は小さく微笑んだ。

「そう・・・なのか?俺がずっと・・・ひとりで想ってた訳じゃなかったってことか?
なんか・・・信じられねーな・・・別にを信じてねーってわけじゃなくってよ、
なんか夢見てるみてぇっつーか。おまえと出逢ってからの時間、全てが俺にとっても大切だと思うぜ」

の頬に手を置く原田は、『お前を手に入れられるなんて思ってなかったんだ・・・』と呟くと、
更にもう片方の手もの頬へと伸ばし、の頬を両手で包み込む。
その手に、静かにの手が重ねられた。

「夢ではありませんわ、私はちゃんと此処におりますでしょう?」

重ねた手に想いを乗せるように、は原田の手をきゅっと握り締める。

「あぁ、は此処に居る・・・これが真実だよな?・・・好きだぜ。今まで言えなかった分、
今日は言わせろよ」

嬉しそうな笑みを見せると、原田は腰に腕を回しの身体を抱きかかえ、床へと寝かせた。

「ええ。今、左之助さんと共にある事が本当の事ですわ・・・
忙しくて逢えない時も、声が耳の奥に残るくらい何度も・・・言って下さい」

床に横たえられた体勢で原田を見上げるの目は潤んでいる。

視線を合わせたまま、ゆっくりへと身体を倒していく原田は、唇が触れ合う位の距離で止まり、

・・・俺にはおまえしか居ねぇんだよ・・・すっげぇ好きだ。どーしたらいいかわかんなく
なる位にな・・・今日はの全てを俺に寄越せよ・・・な?」

覆い被さるような姿勢で、原田は深く唇を重ね、の舌を求めていく。

「私も・・・左之助さんが好き・・・左之助さんが居て下さるのなら、世界を失くしてもかまいませんわ。
・・・私の何もかも全て奪い去って下さい」

原田の言葉と共に下りてくる息が唇に触れると、は切なげに眉を顰め、

「・・・ぅ・・・ん・・・」

求められるまま、舌先を絡めていく。

「逢えない時間も・・・ずっと・・・ずっと、左之助さんの・・・事だけを・・・考えて、おりましたわ・・・」

柔らかく、甘く、何度も何度も原田と唇を合わせる合間に、は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
唇を軽く離しながら原田は、の言葉を聞くと、嬉しそうに目を細めて、見上げるの瞳を
覗き込んだ。

「この世界が無になっちまっても・・・おまえが居るだけで、俺の世界は鮮やかだろうぜ」

口元に笑みを浮かべた原田に、もまた嬉しそうに微笑んだ。

「でしたら、左之助さんが望んで下さる限り・・・二人きりの世界を彩りますわ」
「あぁ。だから今は・・・今も時間を忘れてふたりっきりの世界ってやつを堪能しようぜ」

一端言葉を区切り、一緒にいれるのは“今は”だけじゃなくて“今も”だからなと言い直すと、
原田は再びの舌を絡め、自分の中に吸い寄せては軽く噛む。

「俺も・・・ずっとおまえのことだけ・・・考えてた。
がどれだけ俺のことを想ってくれてたのか・・・・・・今日はおまえも感じさせてくれよ?」

悪戯っぽく笑うと、の腰を抱えたまま横に転がり、原田はを自分の上へと乗せる。

「・・・私も・・・ですか?・・・でもどうしたらいいのか・・・」

噛まれた舌先から走る甘い痺れにうっとりとした表情を浮かべたまま身体を起こすと、
原田の腰に跨る形になった事に気づき、は頬を染めた。

原田はニッと笑みを見せ、前髪を梳かすように頬から撫でると、

「あぁ。も、だ。・・・から・・・接吻が欲しい」

下から見上げながら、自身の身体に触れそうな程のの髪の先を弄ぶ。

「・・・改まって言われると・・・恥ずかしく感じてしまうのは何故かしら・・・」

恥ずかしげに臥せられた視線のまま、引かれた髪に合わせるように、は原田へとゆっくりと
身体を倒していく。

そして、唇が触れる直前で動きが止まると、ゆっくりとは瞳を閉じ、

「・・・左之助さん・・・・・・愛しておりますわ」

祈るように接吻が落とされた。

は、何度こうやって逢瀬を重ねても、そーいう表情すんだよな」

下から手を伸ばして、閉じられたの目尻をそっと指でなぞると、原田はからの接吻を満足気に
受け止める。
そのままの頭を右手で更に引き寄せると、原田は左手をそっと着物の袷に滑りこませ肩の方に
落としていく。
その、肩を滑る着物には身を竦ませた。

「だって、何度逢瀬を重ねても、変わらない気持ちもありますもの・・・
それに、今夜は・・・この部屋で過ごすもの・・・お逢いする事じたいも久し振りですから・・・
緊張してしまいますわ」

覆い被さるような体勢で、キュッと原田の着物にしがみ付く。

「変わらない・・・か。確かにこの気持ちだけは一生変わりそーにねぇな」

原田はククッと喉の奥で笑い、露になったの肩に口を寄せると、軽く痕が付く位に吸い、

の白い肌は・・・相変わらず綺麗だよなぁ。・・・マジで・・・久々だな。
こーやっての肌に触れんのも・・・こーやって脱がすって行為もよ」

惚けた顔での肌を見つめながら着物の帯を解き、原田は照れたような笑みを浮かべながら
の身体をぽんぽんと叩く。

原田の仕草に安堵したように、はしがみ付いた手を緩め、少しだけ身体を起こした。

「変わらない想いを、左之助さんも誓って下さるのかしら・・・?」
「あぁ・・・幾らでも誓ってやるぜ。だってそれが真実なんだからよ」

の心の奥に巣食う不安を見逃さないように、原田は真剣な目での表情を追う。
けれども、真っ直ぐな原田の視線から目を逸らすと、は肩口に付けれた痕に指先を這わせた。

「・・・この紅い痕も久し振りですわね。私も左之助さんに付けてもかまいません?
私ばかりでは恥ずかしいですわ・・・」

着物を脱がしやすいように身体をずらすと、原田の帯を解こうと、は指を伸ばす。

「あぁ、かまわねぇよ。・・・そのために上に乗ってるんじゃねーのか?」

ニヤリと笑うと、が原田の着物を脱がせるよりも早く、原田はの帯を抜き取り
上半身を更に露にさせていき、

「・・・絶景だな、これは」

闇に白く浮かび上がったの肢体を眺め、原田は笑みを深くした。

「もぅ・・・恥ずかしいからあまり見ないで下さい ・・・」

は、顔を真っ赤にすると左手を伸ばして原田の両目を覆い隠す。

「うわっ・・・み、見えねぇ・・・ずるぃぞ、!」

原田は顔を左右に振り、自分の手での手を捕まえるが、手が振り解かれるよりも先に、
の右手は原田の帯を解き、袷を開いていく。

「では、遠慮なく、私も痕を付けさせて頂きますわ」

クスリとの笑った気配と、袷を開かれる感覚に、原田はぞくっと身体を揺らし、

「どこに・・・つけんだ?」

思わず問いかけたそれは、声が掠れていた。

「・・・そうですわね、何処に付けようかしら。・・・お腹の傷には最後に付けるとして
・・・此処に付けてしまったら隠せませんわね? 」

クスクスと楽しげな声がから零れ落ち、右手の人差し指がスルスルと原田のうなじをなぞっていく。

「・・・へ?お、おい・・・その笑みは、まさか・・・・・・」
「・・・その、まさかですわ・・・」

原田が制止する間も無くうなじに顔を埋めると、は軽く吸い付き紅い痕を付け、

「・・・さぁ・・・どう致します?着物でも隠れませんし、髪も届きませんわね。
・・・虫に刺されたとでも言いますか?柘榴の実が落ちるこの時期に」

原田の目を覆っていた手をどかせると、意地悪げに微笑んだ。

「・・・うっ・・・あ〜あ。、おまえ」

原田は項の痕の辺りを擦りながら口を噤んで考え込み、

「・・・いーさ。んじゃ虫に刺されるようなことをするまでだぜ」

身体を起こすと勢いで、意趣返しとばかりにの胸の膨らみに齧り付く。

「だから虫は居ないと・・・や・・・んっ・・・」

突然胸に走る痛みには身体を揺らし、言葉が途切れた。

「居ないなら・・・俺が虫になるって事だ」

齧り付いた胸をそのまま吸い上げると、原田は頂を舌で転がしながらの顔を見上げた。

「・・・ひゃ・・・んっ・・・・・・悪い虫・・・ですわね・・・」

原田の舌と、話す度に掛かる息に頂を刺激され、堪らずはフルフルと顔を振る。

「嫌・・・なのか?」

言葉とは反対に、『そんな事ねぇだろ?』と、頂をちゅっと吸い上げると、原田は首を上げてを見る。

「・・・嫌だなんて・・・そんなことは・・・ありませんけれど・・・」

見上げられ視線が合うと、はぎゅっと目を瞑った。

「だいたい・・・悪い虫っつーのは、おまえも最初っからわかってたろ?」

の身体の反応をじっくり堪能しながら、原田は更に反対側の頂きに向かって舌を這わせ始める。
触れられた先から広がる甘い痺れに、はビクビクと身体を震わせ、少しだけ困ったような表情を
浮べた。

「最初は・・・わかっていなかったような気もしますけれど。だって左之助さんは、いつでも
お優しかったでしょう?」
「・・・そーか? ま、最初はやっぱ優しくしたかったしな・・・色々自信も無かったりしたしよ・・・」

出逢った当時を懐かしむように、原田は一瞬目を瞑る。

「左之助さんはいつも優しすぎますから・・・好きだと言葉を紡がれて・・・触れられて、愛されて・・・
其の瞬間はいつも・・・そのまま死んでもいい・・・と思ってしまいますわ」

胸に広がる切なさを隠すように、柔らかくは微笑んだ。

「優しすぎるか・・・?そりゃ、愛した女にはやっぱ優しくしてやりてぇって思うのは当然だろ?
・・・でも、それはよ、自分の欲望に忠実なだけだ。優しすぎる、なんてことはねーと思うぜ?
だから・・・俺が『いい』って言うその日まで勝手に死ぬんじゃねーぞ」

不意に真剣な顔を、原田はする。

「心も命も、私の全ては左之助さんのものですから・・・勝手に死んだりなど致しませんわ。
『いい』と言われるその日まで。約束・・・ですわね?」

微笑みながら、は小指を原田へと差し出した。

の・・・産毛一本さえも俺のもんなんだよな?あぁ、約束だぜ?」
「髪も目も手も足も、何もかも全て・・・私の全てが左之助さんのもの。約束致しますわ」
「指も髪も声も・・・全部、だ。・・・愛してるぜ」

絡められた小指にが視線を落とすと、の手を握り、小指を絡め、原田は念を押すように、
約束だと何度も言う。

「・・・心配なさらなくても、私には左之助さんだけですわ」
「あぁ、信じてるぜ。のことは・・・」

けど・・・と言い澱み、心に浮かんだ事を原田は言葉にしなかった。
代わりにが言い放つ。

「左之助さんは・・・いつでもとても優しくて・・・優しすぎて・・・怖くなるくらいですけれど」

『いつまでも一緒に居られるわけが無い』と、心に浮かんだ事が、
の口から優しい原田への不安へと、少しだけ言葉が挿げ替えられた。

「怖くなるのか?何も怖がることなんてねーよ・・・そうさせてんのは全部おまえなんだしよ。
怖い事なんて何もねぇ」
「でも・・・幸せすぎて怖いという事もありますでしょう」

少しだけ困ったように微笑みを浮かべたに、『じゃぁ・・・』

「そんな事、考えられねーくらい、もっと愛してやるさ」

と、原田は言い募ると、にやりと意地の悪い笑みを浮かべ、の胸に与える刺激を強くしていく。

「や・・・あんっ・・・そんな・・・胸・・・ばかり・・・」

潤んだ目で訴えかけるようには原田を見つめるが、

「ん?もっと・・・・・・して欲しいのか?」

原田は笑みを深めるだけで、指の動きは止まらない。

「やっ・・・あっ・・・左之助さんの・・・ばかぁ・・・・・・」

更に胸に加えられる刺激に頭を振ると、ぎゅっと閉じたの目元から涙が零れ落ちた。

「わりぃ・・・だって、があまりにも可愛すぎるからよ」

胸への愛撫をやめ、の目元と唇に軽く接吻けると、原田は着物を全て脱がし、
股に手を這わせていく。

「あまり意地の悪いことはなさらないで下さい」

顔を紅くしたまま、脱がせる途中だった原田の着物を引き落とすと、は原田の首筋にぎゅっと
抱きついた。
着物が落ちるのを感じると、原田はを抱き締める。
肌を合わせ、後ろから指を差し入れると、接吻を交わし舌もの中に挿し入れ歯列をなぞる。
上と下、差し入れられた両方の箇所から同時に走る甘い痺れには目を閉じた。

「・・・ぅん・・・んっ・・・」

もっと・・・と、深く引き込むように舌を絡め、歯列をなぞられればゾクゾクと背筋を快感が走っていく。

「ふ・・・ぅん・・・・・・の中・・・熱くなってんぜ・・・もういつでも挿入りそうだな・・・・・・」

接吻けの合間に溜息のように言葉を発し、更に指を増やして中を掻き乱すと、原田は薄く笑みを引く。

「・・・ん・・・あんっ・・・だって、ずっと胸を・・・刺激されて・・・いたんですもの・・・
もぅ・・・我慢できませんわ」

薄く引かれた原田の笑みに、はうっとりと見惚れ、強請るように甘い声を漏らす。

「ん・・・っ・・・あぁ・・・俺ももう・・・我慢できねぇ・・・っ」

ぞくぞくと身体を震わせると、原田はの身体を押し倒して、猛り立った自身を宛がい、

・・・一気に行くぜ」

肩を手で押さえると一気に中に押し進めた。
原田の額に滲んだ汗は雫となり、ぽたぽたとへと落ちていく。

「ああっ・・・・・・・・・・!・・・あっ・・・ん・・・左之助・・・さぁん・・・・・・」

待ち望んだ刺激に、の口から悲鳴に近い声が漏れ、溜まらずしがみ付いた原田の腕に
の指先が食い込んでいく。

「んぁっ・・・久々すぎて、すぐにでもイっちまいそうだぜ・・・。・・・・・・・・・・・・好きだ。
愛してるぜ・・・誰よりも・・・くっ・・・・・」

の再奥部まで到達すると、一気に腰を、何度も何度も打ちつける。

「あっ・・・あっ・・・私も・・・左之助さんが・・・好き」

突き上げられる度に声が漏れ、

「・・・例えば、左之助さんが・・・この部屋にいらっしゃらなくなって・・・
一緒に居る事もできなくなって・・・左之助さんの隣に違う誰かいて、名を呼んでも届かなくなって、
秋が来て冬がきて春が来て・・・また夏になって、何度も季節が巡っていって・・・
いつの日か離れ離れになって・・・二度と逢えなくても・・・・・・左之助さんの事が好きですわ・・・
・・・ あ・・・ぁんっ・・・・・・」

身体を揺さぶられる合間に、途切れそうになる言葉を、それでも伝えようと、は懸命に言葉を紡ぐ。

・・・っ・・・・・離れ・・・離れになんか・・・なんねぇ」

の口から漏れる言葉に切なそうな表情を浮かべながらも、止まらない何かに突き動かされるように
原田は腰を動かし続け、

「俺は・・・おまえと命を共にするって決め・・・ってんだからよ・・・・・・。
んんっ、くっ・・・・・・おまえの中が気持ち良すぎて、もう、もたねぇ・・・・・」

吹き出しこめかみを伝う汗に、原田は苦しそうに目を瞑った。

「あ、あっ・・・で、でも・・・もしかしたら・・・見えない・・・何かに阻まれて・・・
そんな日が・・・いつか来る・・・かも・・・しれませんもの」

泣きそうな顔で原田を見つめるの頬を、透明な雫が伝っていく。

「そんな・・・何かっ・・・俺が叩っ斬ってやる・・・・・・」

原田も苦しげな表情でまっすぐにの顔を見つめ、余裕のない表情で笑い、
濡れたの顔をそっと撫でると、再びの唇が小さく動く。

「・・・何かに・・・阻まれても・・・どうか放さないで・・・・・・」
「あっ・・・あぁ・・・当たり・・・前だ・・・絶対ぇ放さねぇ・・・おまえのことだけは・・・っ」

原田は必死に頷き、しっかりと視線を合わせると、の足を開き自分の肩に乗せ更に奥を
追い求めるように激しく打ちつけた。

「あっ・・・あぁ・・・イ、イくぜ・・・・・・」

中の自身が更に膨張すると、どくどくと熱く脈を打ち、

「ひゃっ・・・あ・・・あっ・・・どうか・・・このまま・・・・・・イって・・・下さい・・・
・・・っ・・・あ・・・あっ・・・このまま・・・壊されても・・・かまいませんわっ・・・・・・」

それに答えるように、こくこくとは首を縦に振り、快感に跳ねる内壁がギュッと原田のソレを
締め付けた。

「はっはっ・・・はぁっ!!・・・っ・・・!!!」

締め付けが激しくなり、原田は最後に大きく腰を打ち付けると、ソレはの中で一気に解放され、
熱いものがの中に流れ込んでいく。

「あぁっ・・・左之助・・・さぁ・・・んっ・・・・・・」

身体の奥深くに熱が広がるのを感じると、は悲鳴のような高い声を上げ、意識を手放し、
原田の腕を掴んでいた指先からも力が抜け、ぱたり・・・と床へと腕が沈んた。



「はぁっ・・・はぁっ・・・」

荒い息と共に脱力した身体を移動させ、意識を手放したを、原田は自分の身体の上に
抱きかかえ、

・・・おまえ以上に愛しいやつはこの世に存在しねぇぜ・・・愛してる・・・・・・」

愛しさを込めるように、の髪を撫で額に接吻けると、原田は息を整えるように上を向いて目を瞑る。

優しく髪を撫でられる感触に、はゆっくりと目を開くと、焦点の定まっていない瞳でぼんやりと
原田を見つめ、

「・・・左之助さんの事を愛しておりますわ。初めての恋・・・だとは申しませんけれど。
でも、これが・・・最後の恋であればいい・・・と・・・そう思いますの」

愛しげな表情では微笑んだ。

その瞬間、胸に込み上げた愛しさを・・・どう言い表したら良いのだろう。

「俺も・・・おまえの最後の男になりてぇ・・・・・・・・・ありがとな」

の頬に張り付いた髪を指で剥がしながら、満たされた表情で原田はを見つめ返す。

・・・ようやく・・・おまえが抱けた。
初めておまえを抱いた時みてぇに今日はドキドキしちまったぜ・・・」
「こうして・・・身体を重ねることができたのは・・・久し振りですものね。
私は・・・好きだと伝えて、ただこうして笑い返して頂けることが幸せですわ」

恥ずかしげに頬を染め、けれども幸せそうに、は微笑んだ。

「・・・やっぱ、男と女は違うのかもな。俺は・・・やっぱ全てが欲しくなっちまったからよ。
でもこうやって身体全てでを感じることが出来て満足っつーか・・・
満たされてすげぇいい気持ちだぜ。こーいうのを幸せっつーんだろうな」

照れ臭そうに笑う原田も、幸せそうな笑みを浮かべる。

「そうですわね。心も身体も満たされて・・・とても幸せな事だと思いますもの・・・
あんなに長く触れ合えなかった事なんて、一瞬で消え去りましたわ」

クスリと笑みを零すの瞳に、不安の影はもう見えなかった。

「あぁ・・・あんなに長く感じられた日々が嘘のようだぜ。
今こーやって俺の腕の中にが居るっつーことがまた幸せなんだよなぁ・・・
どーする?今日は俺の腕ん中でこのまま眠るか?」
「・・・え?このまま部屋で眠られて大丈夫ですの?・・・私は・・・嬉しいですけれど・・・」

ニヤリと笑いながら言う原田に、驚いたようには目を丸くし、伺うように原田の瞳を覗き込む。

・・・好きだぜ・・・・・流石にそれはまずいか?
けど、こーやってるとよ、何もかもどーでもよくなって来ちまうから怖いよな。
でも、このままいつかのようにの温もりを一日感じられてたらどんなにかいいだろうって思うぜ」

髪をゆっくりと撫でながらを抱き寄せ、苦笑すると、原田はふぅと溜息のような笑みを漏らす。

「左之助さん・・・大好きですわ・・・・・・」

髪を撫でられ嬉しそうに目を細めると、は少し考え、

「で、でも、あとで部屋を出るときに気をつければ良いのではありません?
・・・我侭なのはわかっておりますが、このまま一緒に眠って欲しいと言ったら・・・困りますかしら」

甘えるように、ぎゅっと原田へと抱きついた。

「・・・わかった。いーか?このまま、ここに居て」

の言葉と仕草に、原田はフッと笑みを漏らす。

「ありがとうございます。もちろん良いですわ・・・どうかこのまま腕の中に居させて下さい」

嬉しそうに、は微笑んだ。

「あぁ・・・んじゃこのまま寝るか・・・なんかすげぇ幸せな夢でも見れそうだぜ・・・」

原田は少し重たげな瞼をうっすらと開けてを見つめ、の手を取り接吻けを落とす。

「ええ・・・このまま側に・・・きっと夢の中でも一緒に居れますわね。
私の部屋に不用意に入ってくる方はおりませんから、出るときだけ・・・気を付けて下さいませ」

は幸せそうな笑みを浮かべて見つめ返し、原田の欠伸をする様子に笑みを零した。

「夢でも一緒に居れたら・・・ほんとにずっと一緒にいるって感じだな・・・の肌が温かくって
気持ちいいぜ・・・。ん、わかった。この時間を奪われねー為にも気をつけねーと、な」

ニッと笑う原田に、

「左之助さんと過ごせるこの時間は・・・誰にも、何にも奪わせませんわ」

も、口元に笑みを浮かべる。



誰にも

何にも・・・

神様にだって奪わせない

と・・・



原田も

心に強く思う



「あぁ・・・そうだ・・・誰にも・・・・・・な?おまえもちゃんと・・・此処で寝ろよ?疲れてんだからよ」

うとうととしながら、原田はの頬を撫で、

「左之助さんの腕の中なら・・・きっと良く眠れると思いますの・・・それに・・・段々眠くも・・・
なって参りましたもの・・・」

頬を撫でられると、は気持ち良さそうに目を閉じていく。

「あぁ・・・ゆっくり休め・・・おやすみ、

の肩を抱いて原田は目を瞑り。

「・・・お休みなさいませ。良い夢を。夢の中でも愛しておりますわ・・・」

は甘えた仕草で、原田の胸に擦り寄ると、柔らかな微笑みを浮かべそのまま目を閉じた。



こんなにも

愛しくて

切なくて

苦しくて・・・



心も身体も・・・

何もかも・・・捧げるほどに

深く誰かを愛するのは

これが最後であれば良いと



そう・・・

祈りながら





【終】

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と、いうわけで、SSの合作をさせて頂きました!!!

ヒロイン:紅月レン  原田さん:銀木星さま(「諷凛花散」「忍冬〜すいかずら〜」)

多少手を入れた箇所もありますので、厳密にではありませんが
だいたいそんな感じです(笑)

初のSS合作となりましたが・・・
銀さん!ありがとうございました!!!
もうもうもう・・・何度読み返しても、原田さんに・・・
トキメキが止まりませんvvv
(むしろ感動して泣きそうです/涙)

SSの合作は難しい面もあったんですが、細かい点には目を瞑り
雰囲気重視で仕上げてみましたv

銀さん、素敵な原田さんを本当にありがとうございました!!!


2008.03.02 紅月レン



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