『薔薇に眠る』
江戸にも住居となるところが必要だからという理由で、
陸奥は西洋建築の技術を集めた洋館を建てるが、その脇にひっそりと薔薇庭園を作った。
誰を想い作られたものなのか、知るのは秘書をしている辰巳だけだ。
そして、陸奥は時々一人庭園の中に佇んでいる。
「雨の中、花に傘を差す意味はあるのか?」
紅い傘を、薔薇へと差し佇んでいる陸奥に、辰巳は問いかけた。
「薔薇は本当は、繊細な花なんだ。水の遣り過ぎは良くないと庭師が言っていた。」
(それは水遣りのことで自然の雨の事じゃないのではないか)と辰巳は思ったが、
口には出さなかった。
「そんなに心配なら専属の庭師を常駐させても良いんだぞ。」
「いや、可能な限り俺が自分でやりたいんだ。」
「気持ちはわかるが、無理はするなよ?」
「ああ。気をつけるさ。」
愛しそうに薔薇を見る陸奥に、辰巳はそれ以上何も言わなかった。
叶わなかった恋心を、大切に仕舞い込む様に陸奥は薔薇を植え続ける。
「いつの日か、オレがこの世界から消えてしまっても・・・
この薔薇はずっと咲き続ければ良い。そう思うんだ。」
(オレの胸に永遠に咲き誇る・・・あの人のように)
陸奥の願いを叶えるように、今でも邸宅の脇には美しい薔薇園が存在する。
そして陸奥の想いは薔薇に抱かれて眠り続けるのだ・・・
【 薔薇に眠る 終 】
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同人誌『永遠の約束』より転載しました。
陸奥さんがお相手のお話『永遠の約束』の流れの最後のお話です。
2011.03.27 紅月レン
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