『緋の華蒼の華』


――新選組 屯所

幹部達の部屋が揃う部屋の、一番隊組長を務める沖田の部屋から クスクスと楽しそうに聞こえる笑い声。
部屋の中では、一番隊の沖田の隊に入った女性隊士であると 蒼い仕掛けを身に纏った、太夫姿の沖田の姿。

「もういいですか?」
「もう少しお待ちください、後は紅をつけるだけですわ」

は紅入れから、緋色の紅を指につけると、沖田の唇につけ声をかけた。
その言葉に、瞳を開け鏡で自分の姿を見て驚く沖田を は満足げに見つめていた。

「僕じゃないみたいですね」
「よくお似合いですわ」
「よく見つかりましたよね、こんなに綺麗な蒼の仕掛けに紫の帯なんて」
「探した甲斐がありましたわ、本当に沖田さんにお似合いですもの」

緋色の襦袢の襟を大きく抜き、其の上から纏った蒼い仕掛けに、紫の帯に 蒼い髪には帯と同じ色の簪をつけ結い上げていた。
対照的に、沖田の仕度をしていたは髪と同じ色の紅梅色の仕掛けを身に纏い 緋色の帯びをつけていた。

「ですけど……本当に近藤さんだけで、宜しいのですか?勿体無いですわ」
「止められてますからねぇ…近藤さんの前だけか、隊務でやるときしか却下と 言われているんですよね。」
「止められるなんて…何か問題でも?」
「宴会の時にお遊びでやったんですけど、不評だったんですかねぇ?」

首を傾げ不思議そうな顔をする沖田に、は心の中でこっそりと
『似合いすぎて、危険と感じたのかも知れませんわね』と思っていた。
そう思うほどに、太夫の様に着飾った沖田の姿は妖艶な色香を放っていた。

「でも、近藤さんにお見せするだけですから。他の方にも逢いませんよ」
「そうですわね」
さんの姿を、他の方に見せてみたいとは思いますけどね」

にっこりと無邪気な微笑みをみせ、沖田は立ち上がると、の髪に触れ 何処から出したのか、朱赤の薔薇の簪をの緋色の髪へと飾りつけた。

「沖田…さん?」
「この仕掛けを見に行く時に、見つけたんです。さんに似合うと思って お好きとお伺いしてましたけど…朱赤の薔薇の花簪です。」
「私に…ですか?」

にっこりと微笑み、の方へと鏡を差し出し髪に飾り付けられた 朱赤の薔薇簪は、紅梅色のの髪にもその存在を消される事無く そしての髪を引き立てていた。

「あ…ありがとうございます」
「貴女に似合ってよかったですよ、僕は近藤さんほど見立ては上手では ありませんから。」
「そんなっ…とても気に入りましたわ…嬉しいです」

頬を紅く染め、瞳を伏せたに、沖田は優しく微笑みかけると 仕掛けの裾を持ち『近藤さんの部屋に行きましょうか?』と手を差し出した。
と其の時、沖田の部屋へを目掛けて、ドタバタと走る足音が聞こえてくる。

「総司―――!!!」
「え? 原田さん?」
「来ましたね」

勢いよく障子が開き、姿を現したのは、怒りを露わにした原田の姿だった 驚き振り返ったに対し、沖田はクスクスと笑みを見せていた。

「おう! 、総司の奴見なかったか!?」
「沖田さんでしたら、此処にいらっしゃいますわ」
「あん? ……って、もしかして」

クスクスと笑みをみせ、振り返った沖田の姿に、原田の動きが止まり から見ていても分かるくらいに、顔が紅く染まっていく。
不思議に想いが二人を見ていると、怒りながら部屋にきたはずの 原田が今度は慌てていた。

「何ですか? 原田さん」
「そっ…総司!? …って! 何だよその格好は! もう騙されねぇからな」
「嫌ですねぇ〜騙したりなんてしませんよ。此れは近藤さんに 見せに行くんですよ。似合いますか?」
「にっ…似合うけどよ……その…」

困ったように視線を逸らし、当初の目的をすっかり忘れている原田に の中で思わず笑いが込み上げてくる。

「おい、何を笑ってやがんだよ?」
「いえ…何でもありませんわ」
「原田さん、さんに絡まないでくださいね」

にっこりと微笑み、原田の前に立つ沖田に原田は頭を掻くと 『仕方ねぇなぁ…』と呟いた。

「それにしてもよぉ? 何でんな格好してんだ? お前等」
「だから言ってるじゃないですか、近藤さんに見せるだけですよ」
「私が、沖田さんを着飾ってみたかったのもありますわ」
「それだけで、よくんな格好できるよなぁ…総司」
「そうですか? 結構楽しいですよ?」
沖田が原田と楽しそうに話をしていると、沖田の部屋の障子が開き
『あれ〜? 何やってんの?』と不思議そうに首を捻る近藤の姿。
近藤側からは、沖田は原田の影に隠れていて、の姿しか見えなかった。

「うわぁ〜綺麗だねぇ〜君」
「ありがとうございます、近藤さん」
「誰の為の装いだい? 分かってはいるけど、俺の為だったら嬉しいな〜」

優しい笑みをみせ、に話し掛ける近藤に 原田の影に隠れている沖田の表情が、拗ねたものと変わっていく。
そんな沖田の顔をみた原田が、二ヤリと笑みを見せ 沖田の肩に腕を回すと、近藤の前へと押し出した。

「な〜に言ってんだよ、近藤さん。ばっかり褒めてっと 総司の奴が拗ねて、仕事してくれねぇーぜ?」
「え? 総司? って……えええ!?」
「原田さん!? 僕は別にっ」
「何遠慮してんだよ、近藤さんに見せるっつってたじゃねぇか」
「そうですけどっ」

近藤の前に押し出され、いつもの沖田とは思えないほどの慌てぶりに 原田がしてやったりな笑みをみせた。
沖田がおずおずと近藤を見てみると、呆然とした顔の近藤の姿があった。

「良くお似合いだと思いません? 近藤さん」
「………」
「宴会の時も思ったけどよぉ〜本当に似合うよな、こいつ」
「あら、宴会の時にもなさったのですか? 沖田さん」
「ああ、まぁ〜あんときゃ浴衣だったけどな」
「残念ですわ、私も拝見したかったです」

沖田の肩に腕を回したまま、と話をする原田から 近藤は沖田を自分の方へと引き寄せると、原田とに笑みを見せた。

「丁度いいや、原田君と君。このままさぁ〜ススムの手伝いを してやってくれよ。監察方が人手不足で困ってたんだよなぁ〜」
「あ゛ぁ? 俺とでかよ? 近藤さん」
「私は構いませんが……行っても宜しいでしょうか? 沖田さん」
「あ、はい。近藤さんからの指令ですから、行って下さいさん」
「それでは、失礼致しますわね」
「お気をつけて、行ってらっしゃい。原田さん、さん」
「宜しくねぇ〜」

近藤と沖田に見送られながら、原田とは監察方の隊務へと向かった。




――屯所を出て、山崎が待っていると言う花街の揚屋に向かっていると 原田が何やら考え事をしていた。

「どうか為さったんですの? 原田さん」
「あぁ? 嫌…思ったより近藤さんの反応が無かったなぁ〜と思ってよ」
「そうですわね、あんなにお似合いでしたのに…」
「お前も、似合ってんぞ。その簪もな」
「ありがとうございます、沖田さんから頂きましたの」

嬉しそうににっこりと微笑むをみて、原田は頭を掻くと
『やっぱり総司が一番侮れねぇ……』と考えていた。

「そういえば、今度は沖田さんの悪戯、何でしたの?」
「ああ!! 忘れてたぜ! あいつ前が一味倍増だったからって、今度は 逆の粗目倍増の煎餅にすり替えやがったんだ!!」
「そっ…其れは…大変でしたのね」
「笑うんじゃねぇよ! っちくしょー覚えてろよ! 総司の奴」

怒る原田を横目に、は笑いを堪えるのが一番大変な隊務となったのだった。





おわり。


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蒼い空と猫な日々 / 紫葵七緒さまより頂きましたv

姿絵の『艶華』の遊女コスの固定ヒロイン&沖田さんを元に
紫葵さんが書いて下さったお話ですv

しかも!
髪に挿してある花簪を沖田さんがプレゼントして下さいましたvvv
嬉しい〜〜〜〜vvv

紫葵さん、素敵なお話をありがとうございました!!!
大好きですvvv


2006.10.26 紅月 レン



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