【我想う】



―― 闇の黒へと美しく咲き誇るような華麗な深紅の華

次々と仕掛けられる浪士からの攻撃に、一切臆する事無く其の華は
まるで舞を舞うかのように其の花弁を身に纏う

(此れが…総司が独り占めしたがった理由かよ…)

自分へと襲い来る浪士を苦にする事無く薙ぎ倒し、原田は自分の目の前で
繰り広げられる光景に目を奪われていた。

「悔しいですわね…」
「あん?」
「数は私の方が少ないのに、原田さんに先を越されてしまいましたわ」

にっこりと優雅に微笑み、刀を鞘に戻すと原田を現実へと戻すかのように
語りかけてくる。

「沖田さんにも、いつも敵いませんの」

「…そりゃぁ…あいつの速さは尋常じゃねぇしよ…」

原田は槍を担ぎなおすと、その場に居ない、同朋であり今は大人しく床に就いている
であろう沖田を思い出していた。
華麗に舞う深紅の華『 』を十番隊で預かって欲しいと言って来たのは
池田屋での一騒動のすぐ後のことだった。

『本当は、誰にも内緒にしておきたかったんですけど
少しだけ、原田さんに分けてあげますね』

どうして床にいるのか疑いたくなるくらいの、子供のような無邪気な笑みを浮かべ
沖田が原田にそういった時、ほんの一瞬だけ隣に居たの気配が揺らいだのを
原田は見逃さなかった。
君は物じゃねぇぞ?』と嗜める近藤に、甘やかな微笑みを浮かべ
話をする沖田の瞳を何故か思い出してしまう。


「なぁ…
「何でしょう?」
「お前はよ…総司見たいになるなよ?」

思わず口から零れた自分の言葉に、原田自身どういった顔をしていいのか
分からなくなる。


目を奪われるほどの速さと、妖艶なまでの美しさ


何かを強く心に秘めながらも、決して表に出そうとしない強さ


そして、決して掴ませようとしない己の本心


「原田さん?」

「お前には…総司みてぇに、投げ出して欲しくねぇんだ…」

いつの間にか手に取っていたの白い手に、自らの唇を寄せ呟く
沖田は『綺麗だ』と只楽しんでいたのであろう、あの姿が何故か危うく
そして、いつか自分の手をすり抜けるのではないかと怖くなる


― 沖田のように


自分の身を省みず、想いも自覚しないまま全てを投げ出すのではないかと
原田の心を強く締め付ける


此の白い手を離さなければ


此の細い身体を離さなければ


腕に抱き続ければ


此の渇きと恐怖は消えてくれるのだろうか


「可笑しな原田さんですわね…」

クスクスと笑みを浮かべ、優しく見詰めてくるその瞳でさえも似て見える
笑いながら原田へと答えた沖田の無邪気な瞳に


『僕は、自分の命は惜しくありませんから』


脳裏に浮かぶ沖田の言葉に、思わずを見詰めてしまう
きっと今自分は可笑しな顔をしているだろうと、自覚もしている

「…どうして…そんな瞳をされますの?」
「……っ……上っ面だけでもいいからよ…約束してくれねぇか?」
「私は…簡単に死んだりしませんわ…」
「…もう一回…頼む」
「心配なさらなくても…私は消えたり致しません。約束致します左之助さん」

痛いくらいに抱き締められる強い腕に
が何を想っているのか、原田には考える余裕も無かったが
強く馨る華の馨りに、心が穏やかになる

(俺の我侭でもいい…お前を離したくないんだ…)

何も言おうとしない原田に、はただ優しく其の背に手を添えていた

優しく、温めるかのように ――






【終】

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蒼い空と猫な日々 / 紫葵七緒さまより頂きましたv

原田さん×ヒロインです(笑)
・・・紫葵さんなのに原田さん!と思ってしまいました(笑)

剣を振るうヒロインが、沖田さんに似ているなんて
表現して頂けて嬉しいです〜!!!

それから。
それぞれ心に抱えてる想いとか、不安とか・・・
胸の奥に残るような切なさにキュンとなってしまいましたv

紫葵さん、素敵な原田さんをありがとうございました(笑)
大好きですvvv


2007.05.03 紅月 レン



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